──「海王鯨島 亀毛海浜夢珠工場」に《せっせと混ぜよう》という歌詞がありますが、まさしくさまざまな要素を混ぜてますよね。
ASAGI確かにそうですね。何かに縛られるのはつまらないから、“その世界観や景色をどう表現すれば一番伝えることができるか?”ということは常に追求しているんです。それは《せっせと混ぜよう》というフレーズもそうで、自分じゃなかったらこのフレーズをこのメロディーには使わないと思うんですよ(笑)。普通は大体ああいう感じのメロディーには英語詞を乗せるじゃないですか。でも、そうしないところが自分ならではのことで。あと、そうしたことを一曲一曲で表現するだけでなく、バンド全体であったり、アルバム全体であったりで、“なるほど!”と思わせることを今回はすごく意識しましたね。
──6曲目「フューシャピンクとフランボワーズの鍵盤」もそうで、跳ねた鍵盤にオールドスクールなR&R感がありつつ、ポップなパンクのテイストもありつつで、ちょっとカテゴライズしづらいですからね。
ASAGIやはり『アリス』の世界(ルイス・キャロル著『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』)は摩訶不思議だから、そのカテゴライズしづらいところを目指した部分はあって。「フューシャピンクとフランボワーズの鍵盤」はチェシャ猫がモチーフなんですけど、“この世界を表現するために一番マッチするものって何なんだろう?”ってすごく追及した時に出てきたものが“半音を多用すること”だったんですね。素直な曲ってだいたい決まった数の音があれば成り立つと言われているんですけど、そういった枠組みを無視して、“音が織り成す景色で摩訶不思議な感じを表現するにはどうしたらいいのか?”と考えたんです。実際にやってみたら自分自身でも分からない仕上がりになったし、“これを言葉でどう表現しようか?”と思ったら歌詞にも《変なの》という言葉が出てきて。《猫コード》《猫マイナー》《猫メジャー》もそうで…“自分でも特定できないコードなんだから、もう《猫コード》でいいや”って(笑)。『アリス』の世界に摩訶不思議さもそうですけど、そういう誰も使ってないような、世界で自分しか言わないようなことを取り入れることで、Dでしか表現できないこと、自分でしか表現できないことが出てきたんだと思います。