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「说好了的呢」搬运一下作者放在P站上面的fanbox里的短篇

只看楼主收藏回复

反正零书完结
黎明期换主角
虎走阿姨一夜之间过气了(大雾)
(有点小抱怨)说到底换新主角是迟早的事也总不能让作者一直被她自己笔下的角色给束缚嘛……
好了慢慢搬运吧。


IP属地:海南来自Android客户端1楼2019-07-08 10:35回复
    对了忘了说了生肉慎入


    IP属地:海南来自Android客户端2楼2019-07-08 10:37
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      作者在18年的自费签名会上给粉丝写的短篇,是以黎明期主角四人里的蜥蜴人库多为主题的短篇。
      ——————
      若い蜥蜴の敵愾心
      2019年6月16日 17:26

      对所有人公开
       憧れとは、少し違う。
       羨望だろうか。
       妬みに近いのかもしれない。
       あえて人の目を引くために選んだとしか思えない深紅のジャケットに、廊下に足音を高く響かせるブーツ――それを、世界から「堕落の象徴」の烙印を押されたら獣堕ちが身にまとい、人々の間を威風堂々と歩くのだ。
       よく手入れされた純白の毛並みに、ぴんと立った尖った耳。磨き上げた詰めに白い牙。
       美しいと、形容するほかない狼の獣堕ち。
       初めて、自分を恥ずかしく感じた。
       獣堕ちとして生まれたことに対してではない。
       ボロを着て背筋を丸め、すり足で歩く自分の姿が、そうあることが当然だと疑わなかった自分が、恥ずかしくて仕方がなくなった。
       泥で黒ずんだ爪が、白くはがれかけた古い鱗が、「ただの怠慢だ」と言われている気がしていてもたってもいられなくて――。
      「ああ、ホルデム警備隊長? ありゃ目指すだけ無駄だよ、獣堕ちじゃないんだ」
       あれは何者かと尋ねたクドーに、魔法学校の職員は軽く答えた。
      「てめぇ目ぇ腐ってんのか。どうみても狼じゃねぇか」
      「口悪いね、おまえ。獣の戦士ってやつだよ。自分で望んで獣の魂を受け入れたんだ。もとは貴族のご子息だって。生まれた瞬間から疎まれてきたおまえたち獣堕ちとは、根本からして違う存在だ」
       魔法学校の職員にそう聞いて、ほっとした。
       ほっとした瞬間、自分自身に絶望した。
       自分が他者より劣っている理由を与えられて、それで安堵する自分の卑屈さに。
       変わると決めて、ここに来た。
       虐げられる自分を変えるためにここに来た。
       虐げられた者を救える強さを得るためにここに来た。
      「……俺だって」
       クドーは舌打ちした。
       獣堕ちの中でも、とりわけ「気持ちが悪い」と嫌われる爬虫類の姿を鏡に映し、まずはボロを脱ぎ捨てて全身を洗い上げた。
       そうすると、全身の鱗は宝石のように輝きを放つ。
       支給された魔法学校の制服に袖を通し、爪を磨いて整えた。
       丸くなった背筋を伸ばし、再度鏡の前に立つ――それだけで、見違える。
      「俺の、方が……」
       生まれたころから、化け物として生きている。
       恵まれた出自を投げ出して、魔女にへつらって獣の魂を得たような貴族より、生まれながらの獣堕ちである自分の方が、すぐれているに違いない。
       高いところから下を見下す奴よりも、底辺から這い上がった自分の方が、より上に行けるに違いない。
       そうでなければならない。
       そうであるという前例に、自分こそがなってやる。
       憧れでも、羨望でも、妬みでもない。
       魔法学校の学長に付き従い、洗練された物腰で周囲を睥睨するあの男に向かうこの感情は敵愾心だ。
       ――などという、感情を。


      IP属地:海南来自Android客户端3楼2019-07-08 10:39
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        「ぶあっはっはっは! あ、あ、あの犬面に対抗意识燃やしてんのかお前! あの! 犬面に! ひーっはっは! かわいいなおまえ!」
         大爆笑された。
         とある村のとある酒场で、周りから"佣兵〟と呼ばれている大型肉食獣の獣堕ちに。
        「あんた、あの人のこと犬面って呼んでんのか……?」
         颜をしかめて闻き返すと、佣兵は「おっと」とばかりに口を押える。だがすぐに我慢しきれずに、ぐふ、と低く喷き出した。
        「いや悪い。马鹿にするわけじゃねぇんだ。确かにあいつはそこらの獣堕ちとは违うからな。剣の训练も受けてるし、魔术の知识もある。魔方阵书きやがったときは軽くびびった。元ソーレナの下仆ってのもあながち名前倒れじゃねえだろうよ。――ただ」
        「ただ?」
        「初めて会った时の印象が……ど、どうしても……ぐふ、ひ、だはーっはっは! ダメだ笑っちまう!」
         ひぃひぃと腹を抱えながら、佣兵は逃げるように酒场の奥へと引っ込んでいった。
         残されたクドーはカウンターに肘をつき、釈然としない気持ちでひょろりと长い*尾を揺らす。
         そんなクドーに、
        「狼のは强いぞ」
         と背后から声がかかった。
         振り向くと、长い银色の髪をした美しい魔女が、穏やかな笑颜を浮かべて立っている。
        「しかし佣兵はその倍强い」
        「……どうだか」
        「知っているか? 佣兵は狼のと戦ったことがある」
         言いながら、魔女は许可もとらずにクドーの隣に腰を下ろした。
         甘い香りに、ぎくりとする。
         魔女はクドーの方に体を向けてカウンターに肘をつき、
        「闻きたいか?」
         と言った。
        「べ、别に……」
        「しかし我辈は话したい」
        「じゃあ胜手に话せよ……」
        「ではそうしよう」
         くつくつと笑って、魔女はふと、自分の腹のあたりに指を滑らせた。
        「佣兵のここに伤があるのは知っているか?」
        「いや、知らねぇけど」
        「あるのだ。それは狼のがつけた伤だ。その昔、引けぬ戦いを前にして、狼のは佣兵の前に立ちふさがった。お互いに実力は知れている。狼のに胜ち目はなかった。――それでも狼のは佣兵に挑み、そして濒死の伤を受けた」
        「结局负けてるじゃねぇか……どこが强いんだよ」
        「死を前提とした戦いに临むのを、人は强さと呼ぶだろう?」
        「犬死って言うんじゃねーの?」
        「しかしその死には意味があった。狼のが死ぬことで、通る筋があったのだ。佣兵を杀すか、自分が死ぬか――そのどちらも、狼のにとって利があった。ゆえに立った。そして狼のは生きている――意味が分かるか?」
         クドーは一瞬考え、はたと目を丸くした。
        「……相打ち?」
         ゼロは立ち上がる。
        「不器用な性分だ。佣兵も――ああ见えて、狼のも――そして君もな」
         似たもの同士、仲良くやるといいと言い残して、魔女はふらりと去っていく。
        「……似た者同士って」
         似ている、と言われた。
         あの狼の獣堕ちに。そして佣兵に。
         クドーはカウンターにやはり肘をつき、复雑な感情でめまぐるしく色が変わる鳞の色が、いつもの色に落ち着くまでじっと颜を伏せていた。


        IP属地:海南来自Android客户端4楼2019-07-08 10:40
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          同样也是作者在18年的自费签名会上写给粉丝的短篇
          讲述了零书本篇故事开始之前仍然还在洞窟生活的零和十三号的故事
          (顺便一提,黎明期的男主是十三号的儿子
          ——————————
          穴ぐら时代のゼロと十三番
          2019年6月16日 16:06

          对所有人公开
          「……思い切ったものだな、十三番」
           同胞たる魔女たちが集団で暮らす〈穴ぐら〉では、停滞し、よどんだ时间がだらだらと続くばかりで、起こる変化はあまりにささやかだ。
           そんな日々の中、剧的ともいえる変化がおきた。
           十三番――と呼ばれる魔术师だ。
           この穴ぐらで一、二をあらそう実力者だが、悪魔とも契约を成しえていない駆け出しの魔术师でもあった。
           魔术とは、すなわち悪魔を召唤し、その力を借りる契约を结ぶことである。そうすることで初めて、呪文の咏唱と仪式によって悪魔の力を行使できるようになるのだ。
           悪魔の召唤にいたるには、长い年月をかけて修行を积み、悪魔から身を守る防卫术を完璧に习得しなければならない。
           そろそろだろう、と谁もが思っていた。
           次の瞬间にも十三番は悪魔をその支配下に置き、あまたの魔术を操る魔术师になることだろう――と。
          「思ってはいたがな、十三番……よもや悪魔との契约の対価に、その美貌を差し出すとはさしもの我辈も予想できなんだぞ」
           ゼロは少しだけあきれたように、世界がひれ伏す美貌の眉*を下げる。
           その长い银色の髪は、さながら月の夜に辉く雪の结晶のようで、触れれば体温で溶けてしまいそうに见えた。
           対する十三番の容姿は「阴郁」と表现するほかなく、长く伸びた黒髪は不気味ですらあり、过去には青紫色に辉いていたはずの目も、今はよどんだ暗の色をしている。
           血を分けた、兄と妹だ。
           つい先日まで、二人が并び立てば薄暗い洞窟の空気さえもが辉きを帯びるほどの美貌を十三番も备えていたはずなのに――。
           今やゼロの眼前に立つ男は、道を歩けば草木も枯れる、不吉の象徴に他ならない。
          「我辈が持つもので、容姿こそがもっとも不必要なものだと判断してのことだ」
           十三番は答えた。
           ゼロは「もっともだ」と颔きつつも、しかしやはり疑问ののこる颜で问う。
          「しかし十三番よ。仮に我辈がこの容姿を手放すといったら、贵様全力で止めるだろう」
          「止めはせんがな、ゼロ。贵様の容姿を差し出してまで、契约をする価値のある悪魔など存在するとは我辈には思えん」
           そういうものだろうか、とゼロは言う。
           そういうものだ、と十三番は答える。
           ならば、そういうものなのだろう。十三番の答えはいつだって正しいことを、ゼロはよく知っている。
          「しかし……うーむ……その髪の色でその长さ……我辈、他者の容姿にこだわりはないほうだと思っていたが、さすがにいささかうっとうしいぞ」
           ゼロはすいと手を伸ばし、十三番の黒髪に指を络める。
           腰に届くほどの长髪だ。
           ほっそりとした体格ならばそれでもまだマシなのだろうが、今の十三番は体格の上でも优美さとは程远い。
           そのうえ服まで黒いので、全体的にもっさりとした印象が付きまとっている。
          「よし、我辈が切ってやろう」
          「いらぬ世话だ。髪は魔力を宿すもの。いたずらに切れば损失となる」


          IP属地:海南来自Android客户端5楼2019-07-08 10:45
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            ゼロの笑顔の申し出を、十三番はぴくりとも表情を動かさずに拒絶する。
             もともと、表情をほとんど動かさない男ではあったが、容姿が醜悪になったせいで鼻持ちならなさが倍増している。
             ゼロは唇をとがらせ、ぐいと十三番の長い黒髪をひっぱった。
            「貴様の魔力量を考えれば、髪を切って失う魔力などたかが知れているだろう。一人で髪を切るのが寂しいのなら、我輩も一緒に切ってやろう。それなら貴様も寂しくあるまい」
            「よせ」
             十三番はこの提案も即座に却下する。
             眉間に深く皺を刻んで沈黙し、一つ、ため息を吐いた。
            「ゼロ……取るに足らぬ存在のために、髪の一筋たりとも失ってはならない。貴様ほどの魔女の肉体は、切り離した爪の破片ですらも価値を持つと心せよ」
            「しかし、十三番。貴様は我輩にとって取るに足らぬ存在ではない」
            「いいや」
             十三番はきっぱりと言った。
             そして自らの黒髪の束をつかみ、すい、と指を横に滑らせる。
             それだけで、刃物で切ったように十三番の髪は肩の上で切りそろえられた。切り離された髪の束は、十三番の手の中で燃え尽きる。
             周囲にたんぱく質の焼ける独特のにおいが漂い、すぐに消えた。
            「ゼロ――貴様という存在を前にしては、すべてが無価値となり果てる」
             それだけ言って、十三番はゼロに背を向けた。
             一人残されたゼロは軽くため息を吐き、自分の髪をもてあそぶ。
            「きっと我輩も、短い髪が似合うと思うぞ、十三番。それは損失ではなく祝福とは言えまいか? なあ、どうだ十三番」
             などと、問うたところで答えはない。
             ゼロは不満顔のまま踵を返し、穴ぐらに所蔵されている膨大な研究資料を読み解く作業に取り掛かった。
             過去には十三番の後ろについて回り、あれやこれやと質問をしていたゼロも、今や自分で調べるという技術を得た。
             十三番が悪魔との契約を果たした。
             ならばそろそろ自分もだ。
            「見ていろ、十三番。この容姿を差し出すにたる、最高の悪魔を召喚してやる。ふふ、驚く顔が目に浮かぶようだ」
             そう、くつくつと肩を揺らしてから、どれくらいの月日が経ったか――。
             ふと、ゼロは夢を見た。
             悪魔がゼロに契約を申し出る夢を。
             対価をいらぬとのたまう悪魔に、ゼロは契約を許した。妙な夢をみるものだと、夢のなかで苦笑したほどだ。
             けれど、目が覚めると契約は成っていた。
             喜びはなかった。
             ただ、空虚な失望が心を満たす。
             特別であるということが、こんなにも退屈だとは――。
            「――なあ、十三番」
            「うん?」
            「我輩が望めば、なんでも手に入ると思うか?」
            「何を、突然。何か求めるものでもあるのか」
            「平凡さ」
            「縁遠いものを」
             不快そうに片眉を吊り上げた十三番に、ゼロは苦笑を返す。
            「――そうか?」
             ゼロは目を閉じた。その瞼の裏に、いつかの未来が去来する。
            「きっと、我輩にしっくりくると思うがな」


            IP属地:海南来自Android客户端6楼2019-07-08 10:47
            收起回复
              (依旧是)作者在18年的自费签名会上写的短篇
              黎明期女主——洛·克里斯塔斯与佣兵和零讨论着对旅行的感想的短篇
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              旅歩く者たちの談笑(黎明期組)
              2019年6月16日 15:43

              对所有人公开
              「我は旅を愛する。何せ楽しい! 新しい出会いに満ちておる! 我の知らぬ事がまだ、世界にこれほどあったのかと、足を止める時間も惜しいと思うほどじゃ」
              「俺は旅なんぞ嫌いだがね……疲れるわ落ち付かないわ、道には迷うわ野宿は寒いわ、寝てりゃぁ盗賊に襲われるわ……とにかくろくな事がねぇ。村での暮らしが一番だね。楽しさなんぞより安定だ、安定」
               酒場である。
               黎明の魔女として、新しきを求めて世界中を旅してまわるロー・クリスタスと、幼い頃から戦場を転々としてきた傭兵とでは、同じ旅歩く日々を送る者でも、その意見はまるで正反対だった。
               これには、迂闊に「旅の話が聞きたい!」と言ってしまったホルトも、どちらに同調すべきかたじたじとなってしまう。
              「あ、ぜ、ゼロ先生は? ゼロ先生も旅とかしたんだよね! どう? 旅好き?」
              「我輩?」
               傭兵が出した芋のスープをうまうまと堪能していたゼロは、急に話をふられて口の端にスープを付けたまま聞き返す。
               見かねた傭兵が口元をぬぐってくれるのに任せながら、ゼロは答えた。
              「我輩は、傭兵がともにいれば旅だろうと村だろうと構わない。傭兵が我輩の家のようなものだからな」
              「ッカー! 誰がのろけを聞かせろと言うたんじゃ! ではこう考えてはどうじゃ。仮に傭兵が死んだら、おぬしは村に留まるのか? 旅に出るのか?」
              「傭兵が、死んだら?」
               ゼロは片眉を吊り上げる。
              「そうだな……まず、傭兵を殺した者を見つけ次第殺す。必要ならば旅もしよう。どこまででも追いかけて、この世で最も残酷な方法で殺してやる。見つからなければ世界ごと滅ぼす。――それを終えたら、傭兵が愛したこの村に再び戻る」
              「え、何じゃそれめっちゃ怖い……死ぬなよ傭兵。絶対に死んではならんぞ」
              「いや待て。なんで俺が殺されること前提なんだよ。普通に考えたら、老衰とか事故死になるだろうよ」
              「おお、盲点! 我が老いでは死なぬ身じゃから、そこには思い至らなんだ!」
              「わ、我輩もうっかりしていた……そうか、傭兵も老いるのだった……と言うか、今や我輩も老いる身に……」
               人の道から外れた魔女の会話である。
               傭兵はどこか嫌そうにそんな二人の会話を横目に見つつ、哀れな質問者のホルトに温めたヤギの乳を出してやる。
              「まあ、目的によるって事だろうよ。戦争目的に旅してまわってりゃ死にたくなるし、杖のババアみたいに楽しい事探して旅してりゃ楽しいんだろ」
               傭兵の出した結論に、ホルトは目を輝かせる。
              「そっか! じゃあ、きっとあたしの旅は楽しい感じになる! 楽しくする!」
              「おお、そのいきじゃぞホルト君! 我は自主性を愛する! 旅とは旅する者が作るものじゃ! 酒を持て! 旅に乾杯じゃ!」
              「つっても俺は、定住の方がいいと思うがなぁ……」
               ぶつくさと言いながらも、傭兵はロスとゼロに酒を注ぐ。ついでに自分の杯にも酒を満たし、ひっそりと村での定住に乾杯した。


              IP属地:海南来自Android客户端7楼2019-07-08 10:51
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                是搞笑短篇
                佣兵最后被执意要在他的酒馆里开女子会的零和洛斯给折腾到崩溃(大雾)的短篇
                ——————————
                ゼロとロスの女子会
                2019年6月16日 15:34

                对所有人公开
                「女子会じゃ! 女子会をするんじゃ!」
                 突然の宣言である。
                 佣兵の酒场でお気に入りの芋のスープをすすっていたゼロは、岚のように飞び込んできたロー・クリスタスにやや気おされたような面持ちで、
                「……女子会?」
                 と闻き返した。
                 その间の抜けた问いに、ロー・クリスタスは眉*を下げた。
                「なんじゃあ? 知らんのか、女子会。流行じゃぞ、流行! 妇人だけでよい感じの店に集まり、甘いものなどをたしなみながら、コイバナに花を咲かせるんじゃ! 楽しそうじゃの~闻きたいの~コイバナ闻きたいの~!」
                 ロー・クリスタスはじたばたと両手を振り回し、质素なスープ皿を前にポカンとしているゼロにずかずかと歩み寄る。
                 いつも新しい情报を仕入れては、それをためしたがるのがゼロという魔女である。
                 しかし今回は、新しい情报を「持ち込まれる」侧の立场だ。
                 つまりはいつもの佣兵の立场だ。
                 ゼロはスープの皿とロスを交互に见比べ、やや慌てた様子で言った。
                「待つのだ黎明の。我辈、今食事ちゅ――」
                「おお、构わんぞ。我は食の娯楽を爱する。そもそもこの村に、女子会に适した店などありはせん。店と言えばここしかないのじゃからな。おい佣兵!」
                「ふぇあ?」
                 急に话を振られて、黙って成り行きを眺めていた佣兵が情けない声を上げた。
                「あれじゃ、あれ。なんかあったじゃろ、甘いやつ」
                「注文が雑!」
                「なんでもいいんじゃよ~。甘くてふわふわで幸せになれるやつじゃ! そんな感じのを持ってきてくれい!」
                 きゃっきゃっと一人で大はしゃぎして、ロー・クリスタスはいつも携帯している巨大な杖を、そっとテーブルに立てかける。
                 それからテーブルに両肘をついて、にんまりとゼロを见た。
                「して? おぬしの言う"爱する者〟とは? どこのどいつのことなんじゃ?」
                「やめろ马鹿野郎その话は! せめてほかの场所でやれ!」
                 ゼロではなく、佣兵の方が叫んだ。
                 しかしゼロはにたりと邪悪に微笑んで、芋のスープをいそいそと平らげると、厨房に注文を飞ばす。
                「佣兵! 我辈にも甘くてふわふわで幸せになれるものを。我辈、爱する者について半日は语る心づもりだ」
                「帰れもうお前ら! 今すぐに! 何が女子会だ二人ともババアじゃねえか!」
                 佣兵がカウンターを殴って吠えるが、魔女二人はまるで意に介さない。
                「闻こえんの~。ババアじゃから耳が远くての~」
                 当然、観察力に优れたロー・クリスタスは、ゼロが谁を爱しているかを知っている。
                 结局、その日女子会は酒场で开かれ、酒场の空気は时间を追うごとに和やかになり、店主である佣兵だけが、时间を追うごとに神経を擦り减らせていったという。
                 そして翌日から、店には女子会禁止の张り纸が张られるようになったという。
                 その后しばらく、佣兵见かけるたびに、村の人々は少しにやけた颜になったという。


                IP属地:海南来自Android客户端8楼2019-07-08 10:53
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                  2018年情人节的莉莉短篇
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                  ネズミのバレンタイン2018
                  2019年6月16日 19:20

                  对所有人公开
                  「ない……! ない、ないない……! リーリのチョコ……! ない……!」
                   バレンタインデーである。
                   ――と言いたいところだが、その記念すべき日から大きく時間が空いてしまった。
                   ゼロが傭兵に贈り物を用意しているのを知り、自分も神父に何か――と思ってうきうきと用意したはいいが、いざ当日になると勇気が出ず、渡せずにいたチョコレート。
                   そろそろ食べなければ味も落ちてしまうし、捨てるのも忍びない。
                   こっそり自分で食べてしまおう……と引き出しの奥底をあさってみると、確かに隠しておいたはずのチョコレートがなくなっている。
                   ネズミたちが食べたのだろうか。
                   だが、それなら包み紙の破片くらい残っているはずだ。
                   しまったつもりで、どこかに置き忘れたのだろうか。
                   どうしよう。
                   リーリは自分の知らないところで朽ち果てていくチョコレートの事を想像し、震えた。
                   ネズミ達が食べてくれれば幸いだが、もし神父が掃除中に見つけたら、もうリーリは生きていけないかもしれない。
                  「み、みんな! チョコ! リーリのチョコ! しらない!?」
                   リーリは教会を走り回っているネズミを呼び集め、消えたチョコレートの行方を特定しようと必死になった。
                   そんなリーリに、である。
                  「――そこに入っていたチョコレートなら」
                  神父がどうでもよさそうに声をかけた。
                   そして、言う。
                  「私がいただきましたよ」
                   ――と。
                   リーリは息を止め、愕然として神父に振り向いた。
                  「た……食べたの!?」
                  「私のかと思ったので」
                  「そ……そうだけど!」
                   リーリは半ば叫ぶように言う。
                   神父は「ならいいでしょう」とにべもない。
                   勝手に食べるなんて――などと、思うはずもないリーリである。
                   そもそも神父に渡すつもりだった。
                   でも本当なら、自分の手で渡したかった。
                   どんな顔をして食べるのか見たかった。
                   リーリは複雑な気持ちを言葉にできずに、ただもじもじとスカートの裾を掴んだ。
                   そんなリーリに、神父は溜息を一つ。
                  「――一応、私は待ちましたよ」
                  「ふえ……」
                  「来年は、当日に食べられる事を祈ってますよ」
                   それだけ言い残して、神父は着た時と同様にふらりと去って行った。
                   チョコレートの味の感想もない。
                   ――けれども。
                  「……来年。来年……! リーリ、来年、がんばる!」
                   来年、贈っていいと言われた。
                   直接渡せと言ってもらえた。
                   リーリは小さな拳を握り締め、力強く天井に掲げた。
                   勢い余ってころりと後ろに倒れ込み、望外の喜びにジタバタと手足を振り回す。
                   しばし暴れてぴょんと立ち上がり、傭兵の店へと走った。
                   来年、誰より美味しいチョコレートを神父に贈らねばならぬ。
                   そのために、村一番の料理上手の傭兵とあれこれ議論を交わさなければ。
                   今年、ゼロに贈り物を用意しなかった傭兵である。
                   来年こそはと爪を研ぐ気持ちは、きっとリーリと同じだろう。
                   神父がチョコレートを一口食べて、少しでもその口元に本当の笑みを浮かべてくれたらいいなと思う。
                   その時の事を想像するだけで、ほんの少し前まで「渡せなかった」と落ち込んでいた気持ちがどこかへ消え去っていくようだった。


                  IP属地:海南来自Android客户端9楼2019-07-08 10:55
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                    好了,以上都是之前没有搬运过的短篇
                    现在搬过来了
                    以后fanbox有上传了新短篇我也会搬运更新的
                    (反正没人看


                    IP属地:海南来自Android客户端10楼2019-07-08 10:57
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                      接下来是抱怨time——
                      虽然想抱怨的东西开头已经差不多说完了——


                      IP属地:海南来自Android客户端11楼2019-07-08 10:57
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                        至于小说特典嘛这个我没法就是了……


                        IP属地:海南来自Android客户端12楼2019-07-08 10:58
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                          IP属地:海南来自Android客户端13楼2019-07-08 10:59
                          收起回复
                            零我不日换主角有点残念


                            IP属地:广东14楼2019-07-08 11:07
                            收起回复
                              写在令和年号到来之前的零书全员登场短篇——虽然最后被佣兵指出来这一切只是零给他看的幻境(怎么听起来迷之虐(雾)
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                              ゼロの書改元記念オールスター思い出話
                              2019年6月16日 17:36

                              对所有人公开
                              「平成も今日で最後だそうだな、傭兵」
                              「世界観を!! 一行で!! 破壊すんな魔女め!!」
                               春。
                               我が愛する田舎村に出入りする変態商人が持ち込んだ新聞に目を通していたゼロの突然の暴挙に、俺は思わず手にしていたカブを握りつぶした。
                               せっかくなのでそのまま器に入れて、塩もみして漬物に進化させることにする。
                               俺は食材を無駄にしない有能な酒場の店主だ。
                               ギロリと睨むと、長い銀色の髪をした絶世の美女が、だらりと酒場のカウンターに肘をついている。
                              「ここではないどこか、今ではないいつかで行われる、新たな時代の到来を、魔女たる我輩が知っているくらいで、何が世界観の崩壊だ。たとえばこの世界に存在するはずのない動物が、うっかりその辺の動物と一緒くたになってふと登場してしまう映像が流れたとしても、我輩たちの世界になんら影響は及ぼさない」
                              「特定の層にしか理解されない、微妙な閾値のたとえを使うな」
                              「詳しくはアニメ版『ゼロから始める魔法の書』の十一話を参照だ!」
                              「宣伝上手か」
                               ゼロは手元の神束をぱらぱらとめくる。
                              「コミックス『なの!』で傭兵が〝俺は虎だ〟と叫んだ事件もあったな」
                              「単行本で修正されたやつな」
                              「そもそもだ、傭兵よ。我輩達、結構いろいろやっているぞ。非公式でバレンタインやクリスマスをやっただけにとどまらず、公式でポテチ食べながら格ゲーとかもした」
                              「あーしたなぁ。した。したわ。しました」
                              「そうとも、やりたい放題なのだ、我輩たちは。だから平成から令和の移りかわりに思いをはせてもいいのだ」
                               だんだんそんな気がしてきた。
                              「……じゃあいっそ令和ケーキとか焼くか?」
                              「さすがにチョロすぎるぞ傭兵。そこまで迎合しなくていい」
                               どっちなんだよ。
                               なんでちょっと説教気味なんだよ。
                              「じゃあ一体何の目的があって、突然平成がどうのとか言い始めたんですかねうちの魔女様は」
                              「――思い出話をしたくなったのだ」
                              「ふん?」
                              「我輩達はたくさんの冒険をしたな、傭兵」
                              「……あぁ、したなぁ。した」
                               魔女を殺すために向かった国で、魔女を守る仕事を請け負った。
                               世界を滅ぼしかけない魔法の書を追いかけて、大陸を旅した。
                               世界の崩壊を目にした。
                               崩壊した世界も旅した。


                              IP属地:海南来自Android客户端17楼2019-07-08 11:37
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