その元凶たる二つ目の能力。それが『操りの力』だ。
吸血能力と並んで、恐らくコイツが僕に対してもっとも使っている能力の一つ。バキンという、身体に電撃が走るような衝撃を合図に、この能力は始まり、終わる。
原理は不明ながら、その瞬間から僕は怪物に身体の動き全てを、操られてしまうのだ。
有効範囲は恐らく僕が怪物の視界に入っていれば確実に発動。入っていない場合は純也のアパートでの経験を考えると、約五十メートル程だろうか? もっと短いかもしれないし、長いのかもしれない。
因みに、僕の肉体を操ることは出来ても、精神までは操ることは出来ないようだ。五感も正常のままである。まぁ、そのお陰で気味悪さは増し増しであるのだが。
だが、真に恐ろしいのは、この能力が恐らくは僕の血を動力にしているらしい。ということだ。
以前連続で逃亡を試みたことがあるが、結果は散々なものだった。この能力によってひたすら怪物の元に強制的に戻されるという、悪夢のような状況になってしまったのである。
しかもその日の晩。僕はいつも以上に長く血を吸われてしまった。
操りの力を使わせることが、下手すれば僕の死に直結するのではないか。という推測が成り立った瞬間だった。
かくして、僕は怪物の元から逃げられなくなったという訳である。
三つ目の能力は、『現出・消失能力』。
これまた原理は不明だが、これは怪物自身が何処からともなく現れたり、その姿を眩ます能力である。
主に部屋や怪物の前に僕以外の人間が現れた時に使用している。
その性質から、僕は最初、怪物は瞬間移動や幽霊みたいに透明になる事が出来るのだと推測していた。
しかし、そう思っていた矢先のこと――。僕は純也の部屋に行き、しばらくの間、怪物の支配下から逃れた事があった。
後に結局は怪物に探し当てられてしまったのだが、それは今は置いておこう。
ともかく。この事から、この能力にも操りの力と同様に、何らかの制限がある事が明らかになっている。
何度も受けた事によって少しずつ詳細が分かってきた操りの力とは違い、シンプルながら謎の多い能力である。
四つ目。『蜘蛛の使役能力』
これは、ありとあらゆる蜘蛛をまるで兵隊や下僕のように使役する能力である。僕が見た限りでは、蜘蛛にブレイクダンスを踊らせたり、特攻隊の如