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IP属地:广西来自Android客户端1楼2020-10-12 22:44回复
    黙示录のカレンダー
    制暦2001年2月3日。
    今崎浩二(28歳・无职)は、インターネットから以下の知识を手に入れた。
    月経周期は、以下のように缲り返される。
    排卵の时期になると、脳の视床下部から性腺刺激ホルモンが分泌される。このホルモンは、脳の下垂体に卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンの分泌を指令する。
     まず、卵胞刺激ホルモンが卵巣へと分泌される。これを受けていくつかの卵胞が肥大し、その际にエストロゲンが分泌される。エストロゲンは血液を介して子宫に到达し、子宫内膜を成长させる。
     血液中のエストロゲンの増大によって、脳の视床下部は、「卵胞の十分な成熟」と「子宫内膜での妊娠准备の进行」を判断。続いて脳の下垂体に、黄体化ホルモンの分泌を指令する。
     黄体化ホルモンが多くなると、脳の体温の中枢が刺激されて体温が上升する。黄体化ホルモンは卵巣へ分泌され、肥大した卵胞を破裂させる。これが「排卵」である。
     排卵后の卵巣では、黄体化ホルモンが黄体を形成する。この黄体から、プロゲステロンが分泌される。プロゲステロンは子宫内膜を柔らかく変化させ、妊娠の准备を进める。
    妊娠しなかった场合は、排卵からおよそ二周间程で子宫内膜が剥离する。これが「生理」である。 月経周期は、一般的には28~35日周期になっている。そして周期の长短に関わりなく、次回月経予定日の12~16日前に排卵が起こる。
    今崎浩二はそれから一年にわたって、Y家のごみ袋を集积所から回収し続けた。そしてごみ袋のなかから、使用済みの生理用ナプキンだけを丁宁に选り分けた。
    回収されたナプキンは彼の自室の壁に贴リ付けられることとなった。添作作业にはセロハンテープが使用された。
    やがて壁は戦利品たる赤黒いナプキンで覆い尽くされ、结果的に、そこにはY家の姉妹の月経周期が浮かび上がることとなった。今崎浩二はそれを「黙示录のカレンダー」と呼んだ。
    失败は许されなかった。
    机会は一度しかなく、それは世界を救う唯一の方法だった。人类が升华へど至る最后の道であった。今崎浩二は孤独に耐えた。
    彼はもともと孤独な男であった。五年以上、彼の部屋だけが彼の世界だった。闭じられた世界のなかで、彼は、自分にぴったりと寄リ添う孤独という名の呪いを谛観していた。孤独であること。それは生まれたときから魂に刻まれているしるしのようなものなのだ。骨に巣食う病気や肌の色と同じで、そのありさまをを选ぶことはできない。
    もちろん表层を涂り変えることはできる。だが、そんなものは雨の日のへアスプレーみたいに剥げ落ちる。なぜならそれが本质というものだからだ。静かに向かい合って生きていくしかない种类のものごとが世界には存在するのだ。
    しかし、使命感は、彼の孤独を孤独として浮かび上がらせることとなった。彼は孤独を恐れるようになった。そんなとき——「おれは戦车だ」——今崎浩二は、嫌な匂いがむっと鼻をつく部屋でひとりつぶやいた。おれは戦车だ。
    キュラキュラキュラ! それ以上はなにも闻くな!
    今崎浩二はこのようにして决行日を导き出した。
    彼はY家に押し入リ、Y家の三姉弟——长女、次女、长男——を全员缚リ上げた。
     彼はまず长女を包丁で胁し、弟のぺニスを咥えさせた。长女は泣きながらそれを拒绝したが、次女の肩口を包丁で一突きすると(そして次女が绝叫を上げると)、自ら进んで「します」と言った。
     长男はすぐに勃梁梁梁起した。
     それどころか、姉の口腔に**を放った。
     今崎浩二は烈火のごとく怒った。
     长男の腹を蹴飞ばして闷绝させ、それから长女に命じて、次女の手のひらに**を一滴残らず吐き出させた。そしてこう命じた。
    「姉ちゃんの子営にそれを全部流し込むんだ」
     きょとんとする次女の肩の刺し伤に、今崎浩二は亲指をねじ込んだ。
    「早くしろ、戦车が壊れてしまう!」
     その作业は、スポイトを使って行われた。
    次女は涙を流しながら兄の精梁梁梁液をスポイトで吸い取り、姉の膣口へと流し込んだ。姉妹がすすり泣く声と、じゅるじゅるという淫梁梁梁靡な音が暗いリビングに响いていた。今崎浩二はそんな种付け作业を见ながら自慰をして、次女の髪の毛に大量の精梁梁梁液を放った。呆然とする次女の髪をぐしゃぐしゃとかき回しながら、今崎浩二は宣言した。
    「よし、次はお前の种付けだ」
    长女が泣きながら恳愿した。——私ならどうなってもかまいません。妹だけは许してください!
     今崎浩二は交换条件を出した。


    IP属地:广西来自Android客户端2楼2020-10-12 22:49
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      しかし、今崎浩二の行為はまったくの無意味だったのである。
      Y家の三人はみな養子で、血が繋がっていなかったのだ。
      すなわちこの寓話の教訓はこういうことだ。
      人生とはオチの無い冗談でしかない。
      ──そういうものだ。


      IP属地:广西来自Android客户端4楼2020-10-12 22:51
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        世界の果てを車はゆく
        カーラジオの男が言う。
         「今年の冬の流行色はあおいろです」
         その話題は僕の心を奇妙な方向にスライドさせる。座りの悪いどこかへと連れてゆく。
        ガラス窓の向こうは摂氏34度の世界で、冬の到来はアコーディオン状に折り重った熱気のはるか彼方にある。夏。
        完壁な夏がそこにはある。象徴としての夏でも、形而上の夏でも、詩的比喩としての夏でもない。リアルでシンプルな夏。アクセルを踏み込むと時速90キロで後方に流れ去っていく夏。
        それでもカーラジオの男は予言する。「今年の冬の流行色はあおいろです」。
        やれやれ。
        僕は思う。
        僕たちを取り囲む多くのものごとがそうであるように(あるいは僕たちそのものがそうであるように)、来たるべき冬の流行色もまた定められているのだ。
        「今年の冬の流行色はあおいろです」。
        それは正確には予言ではなく、予定なのだ。
        ハンドルを指で叩きながら──とん・とん・とん──個人的営為と絶対的運命の相克について考える。そのシビアなしのぎあいのなかで、僕がふさわしい自我を得ることができる可能性について考える。もちろん少しのあいだだ。
        煙草一木分の時間。それ以上考えたところで辿り着く場所は決まっている。なぜならすべては予定されているのだ。
        冬の流行色みたいに定められている。
        オーケイ。
        諸君、ロックしようじゃないか。
        カーラジオのチャンネルをひねる。
        アナウンサーの声が雑音に溶け、かわりにギターの音色が夜の霧みたいにスピーカーからこぼれ出す。大昔のプロテスタントソング。ロックと呼ぶにはあまりにフォークじみたしろもの。
        まあいいさ、と僕は思う。
        まあいいさ。自我についての沈思黙考に比べれば、ずいぶんと健康的でドライブ的だ。イエス。すべては比較の問題だ。どちらがよりマシか。より長い期間我慢できるか。吐瀉物と排泄物のどちらがより詩的かというような意味合いにおいて、それは無意味で限定された選択なのだ。無意味で/限定された/選択。とん/とん/とん。
          ライリー・Rをころしたのはだれだ?
          なぜ、どんなわけがある?
          十五人の奇術師が おれにいう
          「いいかい ヤンク・ディラン
          人生は 坂道で起こる事故みたいなもの
          制御できない悲劇の連続のなか
          われわれがなせることは あまりに少ない
          だとしたら なあ ヤング・ディラン
          ライリー・Rは ロストハイウエイにいくしかなかったのさ」
         リアルな僕の世界についてのインフォメーション。
        F県I市。東京から車で三時間のポイント。 僕たち(つまりは僕と、僕の車)は時速90キロでハイウエイを移動してぃる。まっすぐなハイウエイ。カール・ルイスが全カでラインカーを走らせたみたいにまっすぐ。見渡す限リ他の車の姿はない。僕たち専用の失われたハイウエイだ。
        ハイウエイの両協にはホ口コースト的な荒野が広がっている。すべてが白っぽい砂利に覆われてぃる。田畑どころか、木も草もない。信号機も、民家も、コンビ二も、ばかげた交通標語の看板もない。──いいかいヤング・ディラン。交通標語の看板さえないのだぜ? 『ギュッと締め/心とからだの/シートべルト』。極めて完壁に近いかたちの無意味。そしてここには、そんな無意味さえありはしない。100パーセントの荒野。
        30分はど前、放棄された原子力発電施設の脇を走り抜けた。
        閉鎖されて久しいのであろう。かつてそれが抱えていたはずのべらぼうなエネルギーは、洗いざらしのジーンズみたいに漂白されてしまっていた。それは僕に巨大な動物の死骸を思わせた。しんどそうなため息をひとつついて、次の瞬間あっけなく死んでしまった生き物。そしてそれは死骸的であると同時に墓標的でもあった。
        陰鬱な光景だった。世界に動きはなく、のぺっりとした均一性の上に夏だけが満ちていた。時間さえも死んでしまったように思えた。なにもかもが身を固めて、息をひそめていた。空は灰色で暗く、黒い雲がものすごい勢いで此方から彼方へと流れていった。
          すてきな すてきな ロストハイウエイ
          へイ いかれたガチョウにしがみつけ
          すてきな すてきな ロストハイウエイ
          へイ いかしたハンドルを握るんだ
         ──世界の果て。
        僕はそんな言葉を思う。舌に乗せ、声に変えてみる。
        「世界の果て」
         悪くない。
         それは時速90キロで夏をゆく僕の車のなかに、素敵に響く。
        リリカルだ
        詩的にリリカルで、駄菓子みたいにポップだ。
        LYRICALでPOPなWORLD'S END──。
        「世界の果て」
         けれども二度目に口に出してしまうと、それはもうちっともリリカルでもポップでもなかった。魔法は失われてしまっていた。ただ白々しく、虚しいだけだった。
         なぜだろう?


        IP属地:广西来自Android客户端5楼2020-10-12 22:52
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          もらろん──僕にはわかっている──世界の果てなど本当はどこにもないからだ。
          辿り着いた瞬間、世界の果てはリアルなフロンティアに化ける。僕たちはそこで生きていくしかない。その時点ですでにそこは『ここではないどこか』──世界の果てではなくなってしまっているのだ。僕たちが辿り着くたびに、世界の果てからは世界の果て性とも呼ぶべき神秘が失われる。一歩前に出ればその一歩先に。伸ばした手のすぐ先にありながらも決してつかむことができない。
          あるいは、僕たち自身が定点のない世界の果てなのかもしれない。
          僕たちが前に進む。世界の果てもまた前に進む。亀に追いつけないアキレスみたいに、僕たらは世界の果てには辿り着けない。それはすなわら、僕たらは僕たち自身をつかむことはできないし、僕たち自身から逃げることもできないということなのだろう。
          カーリングみたいにシビアで、トライアスロンみたいにハード。
          つまりは現実的ということだ。
          やれやれ。


          IP属地:广西来自Android客户端6楼2020-10-12 22:53
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            カルマ落とし
            「御茶ノ水という町が好きだったんです。
            少し足を伸ばすと秋葉原だとか、後楽園遊園地だとかで賑やかなんですけれど、私は御茶ノ水の静かさが好きで。
            とりわけ特徴がある町というわけはないんですけれど、メイン通りから少し中に人ったあたリ──ニコライ堂とか。あのへんの空気が好きなんです。洗練された田舎というか、やぼったい都会というか。わりあい緑が残っているんですよ。ああ、そんなこといわなくてもご存知ですよね、東京の人だから。
            町って、どこであれ、そこにしかない空気感みたいなものがあるものですよね。その波長が合うか、今わないか。
            御茶ノ水は、合った。そういえば、友達と、『町の色』っていうのを話したことがあるんです。町には固有のイメージカラーがあるんじゃないかって。池袋は青。秋葉原は赤──なんでだろう。赤いネオンが多いから? あはは……。たいした統一見解は得られなかったんですけれど、「御茶ノ水は緑」というのだけはピッタリあって。そんなこと、覚えてます。
            あのあたり──JR水道橋駅に近づくと特に──坂が多くて、自転車はあまり役に立たないんです。だから原付自動車の免許を取りました。大学一年の夏休みです。行動範囲が広がりました。これさえあればどこにだっていける──。わけもなくあたりを走り回ったものです。暑くなったら本屋に入るんです。本を読みながら、汗が引くのを待つ……。
             本は、そんなに読むほうじゃないんです。べストセラーとか、情報雑誌とか。そういうのをときどき読むだけ。
            すみません。
             東京の夜って、お墓みたいじゃないですか。
            昼間はあんなに賑やかで人がいっぱいなのに、夜になると誰もいない。そういうのがお祭りの後みたいでいやだったんです。哀しい気持ちになるから。新宿で飲み会があって終電を逃したとき、歩いて家に帰ったんですけれど──哀しかった。すごく哀しくて、涙が出そうになりました。核戦争のあと、世界で一人だけ生き残っちゃったみたいに哀しかった。コンビニは開いてます。でも、コンビ二の蛍光灯もすごく白々しく見えた。切り離された感じ。ひとりなんだって、思った。
            でも、御茶ノ水の夜はそうじゃないんです。
            もちろん人はいないし、静かです。でも、いやな静けさではないんです。せいせいとした、凛とした──昼間のおまけじゃないんだって。そんな夜。優しい夜。
            家賃は安くはなかったですね。でも、親の仕送りがあったから。半分の6万円はそれで賄っていました。残リはアルバイト代で。友達は沿線に引っ越せって、しきリにアドバイスしてくれたんですけどそれでも御茶ノ水が好きで。
            あの日もアルバイトにいく途中だったんです。新宿の××って喫茶店。サラリーマンのひとが打ち合わせで使う喫茶店で──笑えるでしょう? みんな笑うんですよ、じじくさいって。
            中央線を使うんですけど、よく遅れるんです。ほら、人身事故とか、いろいろ。その日もなにがあったのかしらないけど、いったん、代々木の手前で止まっちゃったんです。10分くらい止まっていたかな? ……いえ、昼間だから混んでいなくて、そういう意味でつらいということは。ただ、バイトに間に合わないって、焦っていました。時間は守るはうなんです。一度も遅刻したことないです。いやなんです、そういうの。すごく。別にとくべつ几帳面というわけじゃないんですけど、時間は、うん。だから焦ってました。
            そしたら、胸の部分にビシャーッって。
            最初、野球のボールでもぶつけられたと思ったんです。液体というよりも、固体がぶつかった感じで。でもじっとりとしていたから、ああ、これはぺンキかなにかだって。
            買ったばかりの白いTシャツだったし──こいつはなんてことするんだ、って、すごく腹が立ったんです。だから、前に座ってる子をジロッってにらんだら、その子も私を見てた。目と目が、合ったんです。高校生くらいの男の子で。とたんに、怖くなった。殴られる、って思いました。どうしてかわからないけど、殴られるって。
            でも、なんかその子、真っ赤なんです。首の下からズボンまで、真っ赤で。のどからぴゅー、ぴゅー、って噴き上がってるんです。スプリンクラーみたいに……ああ、血だ、って──。
            吊り革をつかんだ手がこおりついて、逃げられなかったんです。
            だから助けて、って叫びました。手が取れないんです、助けてください、って。
            まわりのひとたらは、私の声で我に返ったみたいでした。悲鳴が聞こえて、隣の車両に逃げていく人とか、げえげえ吐く音とか。私は凍りついたまま、金縛りのまま。目をつぶって助けて助けて助けてって。
            そうしたら、ずしっ、と抱きつかれたんです。
            心臓が上まるかと思いました。
            反射的に目をあけました。
            血まみれのその子が席から立ち上がって、私に抱きついていました。
            耳元で声がしました。


            IP属地:广西来自Android客户端7楼2020-10-12 22:55
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              「ぺちゃぺちゃぺちゃっ」
               って聞こえました。
              だから
              「えっ?」って。
              そしたら大声で──。
              「ワスレルナ!」
              大声で言ったんです──」
              × × ×


              IP属地:广西来自Android客户端8楼2020-10-12 22:56
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                依頼人はそこまで言うと、深い沈黙の中に沈みこんだ。
                彼女の視線は、テーブルの上のマグカップにじっと固定されていた。
                 マグカップのなかのコーヒーはすっかり冷え切って、表面にしなびた膜ができていた。東京を引きあげるときに持ってきたのであろう、テーブルやソファーは品がよく、垢抜けていた。けれどもオレンジやイエローのポップな家具はこの和室にはひどくなじんでおらず、どこか現実味を欠いていた。本来ここにあるべきではないものたち。ある種の哀しみすら湛えていた。クーラーが効きすぎていた。まるで小酒落た冷凍庫にいるみたいだった。
                 話を終えた彼女は、ひどく老け込んで見えた。 僕を出迎えて、コーヒーを入れて、ソファーに座ったときから二時間しか経っていないのに、もう200歳も歳をとってしまったみたいだった。彼女はマグカップを見つめていた。けれども本当はマグカップを通り越えたどこでもない空間をじっと見つめているのだった。彼女の目には何も映っていなかった。暗い井戸みたいなくらやみが、ぽっかりとあるだけだった。
                本当は魅力的な女性なのだろう、と僕は思った。
                御茶ノ水の坂ですれ違った人たちに、春の木漏れ日みたいな微笑みを浮かべさせる女性。けれども今の彼女からは、そうした種類の美徳がことごとく失われてしまっていた。ひどいことに、彼女は人間にさえ見えなかった。かわいそうなミイラみたいに乾いて、消耗していた。
                そしてそれこそが、人狼輪廻教会が彼女にかけた呪いなのだ。
                 人狼輪廻教会。
                 チープな名前だ。彼らは拠るべき教会を持たなかったし、輪廻なんて信じていなかった。もちろん人狼でさえなかった。
                その名前のこけおどし加減が、本質的な彼らのチープさを物語っていた。とどめに彼らはインターネット上にのみ存在する少年少女のカルトだった。電脳カルト人狼輪廻教会。勘弁してくれ。そして人狼たらは制暦2002年の夏──7月1日正午ちょうどに様々な場所で一斉に喉を掻き切り、自らのチープ性を完壁にしたのだった。


                IP属地:广西来自Android客户端9楼2020-10-12 22:56
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                  『互いの顔さえ知らない少年少女たちが──』
                  『デートの待ち合わせでもするかのように示し合わせて同時刻に命を絶つ』
                  『携帯電話によるうわべだけのコミュ二ケーションに不安を抱き──』
                  『ウソが横行する社会に共感を覚えられず──』
                  『電脳上の擬似コミュ二ティに居場所を見つけた少年少女──』
                  『そしてそれを永遠にするためには死を選ぶしかなかったのだ──』
                  人狼たらはウルトラチープな殉教者だった。ありがちな現代社会が生み出した、ありがちなピエロだった。多くの人間は驚くと同時に、鼻白んだ。「やれやれ」と思った。「こいつらはどうしてこんなにも馬鹿なんだ?」
                  彼らは間抜けだった。しかし、自分たらの意思表明がすぐに忘れ去られることぐらいは理解していた。その尊さに見合わず、自分たらの行為がワイドショーのドブ川に流れ消える数々のゴシップのひどつに成り下がることを知っていた。
                  だから人狼たらは個人に呪いをかけたのだった。
                  社会に名を刻むことができないのなら、個人にそれを刻んでやろう。
                  見知らぬ他人の前でいきなり喉を切った。
                  相手の目を覗き込んで言った。
                  「忘れるな」と。
                  彼らは、彼女たちに、革命への参加を強制した。傍観者として通り過ぎ、忘れることを許さなかった。共犯者に仕立てあげた。彼らは死んだ。しかし、ゼロにはならなかった。彼らがなにを考えていたのかは知らないし、知りたくもない。しかし、その想念は確かに残ったのだ。少なくとも、僕の目の前で虚空を眺めている(あるいは彼女自体がすでに虚空そのものなのかもしれない)依頼人の心には、深い傷として残った。
                  呪いとはすなわち、そういうものなのだ。
                  僕はアタッシュケースを膝の上に載せ、ロックをはずし、小瓶を三つ取り出し、机の上に一直線に並べて置いた。
                  薄暗くなった部屋の中で。小瓶は宝石のように輝いていた。
                  依頼人の顔に複雑な色が浮かんでいる。
                  この人はいかれているんじゃないだろうか?
                  そして私もまたいかれてしまったのではないだろうか?
                  「安心してください」
                   と僕は言った。
                  「月蝕カルマ水があなたの穢れを落とすでしょう。あなたが求め、そしてあなたを救う霊水です。あなたの穢れ──カルマは相当のものです。けれども中和することができます。見たところ、三瓶もあれば足りるはずです。これだけ置いていきます。足りなかったらまた私を呼んで、お話を聞かせてください」
                  「あの──」
                  「使い方はこの紙に書いてあります。危険なものではありませんが使い方を間違えると効果がありません。しっかり目を通して、それから使ってください」
                  「あの──」
                  「ひと瓶、三万円です」
                   とびきりの笑顔。
                  鏡で何回も練習したとびきりの笑顔。
                  安心してください。
                  なにも心配は要りません。
                  私が、あなたを、救済してあげましょう。
                  悪いのはあなたではないのです。穢れなのです。カルマなのです。
                  さあ、穢れを落としましょう。
                  カルマを落としましょう。
                  大丈夫です。
                  私に任せればなにもかもうまくいくようになります。
                  微笑みながら僕は思う。
                  姉さんも、こんなふうに笑ったのだろうか──?
                  姉さん。
                  百円ショップで買ったビ二ールロープを三重に首に回して、梁からぶらさがった姉さん。
                  ああ、姉さんもこんなふうに笑ったのだろうか……?


                  IP属地:广西来自Android客户端10楼2020-10-12 22:57
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                    累死了,明天再发


                    IP属地:广西来自Android客户端11楼2020-10-12 22:59
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