ヒョウリ
まさに『ウルトラマンブレーザー』は、ブレーザーがウルトラマンになっていく話だと思ったんです。未知の宇宙人が、ウルトラマンという存在に進化していくというか。それは、ウルトラマンとは何かっていうのを、問い直す作業だとも思うんです。
田口
ブレーザーに関しては、僕の心の中での裏設定みたいなものはたくさん作ってあるし、それをまぶしているんだけど、それをあえて公式設定にはしていないんです。例えば、ファードランが登場したことで、向こうではああいう生き物を相棒にして戦っているんじゃないか、っていうのは何となくわかる。でも、それをあちらの世界を映像化したり、公式設定として文面化するのは、『ブレーザー』においてはバカバカしいなって思ったんです。だって、月のことすら人類はまだよくわかってないわけじゃないですか。それなのに、人類ごときが、何億光年先のこととか、ウルトラマンのことがちゃんとわかるわけないでしょ?って思った時に、みんなが「あの描写は、こういう意図、こういう狙いだったんじゃないか」って考察ができるように、すべて「私案」ということにしたんです。
僕は、円谷プロさんが公式設定としている設定ですら、実はそうじゃなくてこうなんじゃない?って勝手に思っていることはあるし、マニアの人が見たら「あの時言ってたことと違うじゃないですか」みたいな矛盾もあって、諸説があるわけですよね。
例えば、M78星雲が設定として出てくるユニバースの地球は、全部同じ地球かっていうと、それも違うんじゃないかと思うんです。気持ちとしては、M78星雲があるのはどれか一つのユニバースだけっていうことにしておきたいけど、でもそれだってわからないわけですよ。宇宙科学ってわかんないことばっかりで、ダークマターだって、それらしきものがあるっぽいけど、じゃあそれが何なのかは未だにはっきりとはわかっていない。だとしたら、我々が地球から観測してわかっている事って、いくつかのユニバースにウルトラマンというものが同時発生していて、どのウルトラマンも思想は違えど、宇宙のバランスを保とうとする習性がある生命体だっていうことだけ。これって宇宙全体を一つの生命だとしたら、白血球みたいな存在なんじゃないか……、そんな考察を勝手にやっているわけです。
ただ、今回の『ブレーザー』におけるユニバースは、おそらくM78みたいな文明を持った星じゃなくて、狩猟民族みたいな進化途中のウルトラマンが発生したユニバースなんじゃないのか。それが偶然、何の因果か地球人と繋がってしまう、鏡のように他のユニバースと同じようなことが起きてしまったっていうのは、マルチバース理論で言うと正しい気はしていて。